<目次>
・「経営者の思いを形にする100年カレンダー活用法」セミナーで伝えたかったこと
・今後の資格継続セミナーのご案内
「経営者の思いを形にする100年カレンダー活用法」セミナーで伝えたかったこと
経営者にとって企業とは、自分が手塩にかけて育ててきた、それこそ子どものように大切なものである。しかし人間に寿命がある限り、永遠に企業の面倒を見ることはできない。一方、企業はうまく経営していくことで、100年以上だって生かすことができる。ならば、経営者にとっても企業にとっても、最良の形で事業承継を行うことが望ましい。そしてそれは、少しでも早いほうが幸せなことが多い。そのことをはっきりとわかってもらうためのツールとして、私は「100年カレンダー」を経営者に書いてもらっている。
1.100年カレンダーでわかる「過去・現在・未来」
100年カレンダーとは、経営者のこれまでの人生を振り返り、現在の立ち位置を確認し、これからどれだけの人生が残っているのかを「見える化」するためのツールである。必死で生きてきたことを再確認し、自分の人生を物語として見直してみる。そして、大切にしてきたことやあきらめてきたこと、実はこれから挑戦できることなどをカレンダーに書き出して、残された人生をどう生きることが自分にとって幸せなのかを、改めて考えるきっかけとする。
「経営が全て」ではなく、事業承継を進めることで、自分の時間を自分のために使えるのだ、ということを知ってもらいたい。
2. 企業の100年後を考えてみる
創業したての企業であれば、その企業の100年後を考えてみるのもいいだろう。目の前の業務の忙しさからちょっとだけ離れて、「もしこの企業が100年続くなら、どんな企業になっているのか」ということと真剣に向き合ってみる。すると意外にも、どのタイミングで企業を大きくしていくべきか、人材採用をどうするべきか、自分がいなくなった後に残せるものは何か、を決めていないことがわかるのだ。
「この企業を、どういう企業にしたいのか」を考えると、やはり従業員からも外部の人間からも愛される企業であってほしいと経営者は望む。そしてそうなるためには、実は企業理念がとても大切だということに気がつく。中小企業の中でも、特に小規模な企業こそ、「愛着を感じてもらえる企業づくり」という視点が欠かせない。
事業内容は変化する歴史の中で、変わっていくかもしれない。
しかし企業理念は、100年後も企業に残せる。
そしてなにより、経営者自身も、
「ぼんやりと思っていたことが、とてもクリアーになった」
と、新鮮な喜びとともに驚いてくれる。
目の前のことも大切だが、長期的な視点で「誰からも愛される企業」を作っていくための計画を、100年カレンダーを通じて作っていくのも効果的だ。
3. 100年カレンダーの使い方は∞(無限大)
セミナーでは、経営者に書いてもらう自分の人生を反映したカレンダーと企業の100年を考えて作るカレンダーについて話した。しかし、それ以外にも使い方はある。たとえば、後継者に書いてもらう100年カレンダーだ。もし、候補者が複数人いれば、それぞれに書いてもらい、比較するのもいいだろう。
このように、いろいろな視点から自分の頭の中にある「もやもや」としたものを、100年カレンダーに書き出し、見える化する。それは経営者自身の生きてきた証であり、未来への決意表明でもある。簡単なようで難しいからこそ、支援機関として横にいることに意味がある。
後継者が高齢になってからの事業承継よりも、少しでもはやい段階で実施するほうが、経営にいい影響を与えるというデータもある。なかなか引退が決意できない経営者や、長期的な視点からの事業プランのない経営者などに一言、
「ちょっと立ち止まって考えてみませんか」
と声をかけて、100年カレンダーを書いてもらってみてはどうだろう。思ってもみなかった想いや未来への期待が生まれるにちがいない。
【執筆者紹介】
安孫子栄里子(あびこえりこ)
ヘンカノミカタlab(事業承継士・中小企業診断士)
中小企業診断士の資格を取得後、経営コンサルタントとしてM&A、新規事業支援、ブランディング、販路拡大支援などを専門とする。傾聴と対話に重きを置き、挑戦し続ける経営者との伴走支援を実施。これまでに100社以上の支援を行っている。
当記事は、2025年5月27日に資格継続セミナーで講演した内容を要約して掲載しております。
今後も資格継続セミナーを下記の通り開催致しますので、ぜひご参加ください。
今後の資格継続セミナーのご案内
資格継続セミナーは、事業承継支援者向けのスキルアップセミナーです。
※画像をクリックすると申込ページに移動します。
【2025年7月】
開催日 :2025年7月29日(火)18時30分~20時30分
講師 :岩本 亨 氏
テーマ :再生しなければ承継できない企業への支援の進め方
内容 :日本の中小企業の6割程度は赤字です。再生すれば円滑な事業承継ができるでしょう。しかし経営者が高齢の場合等は、再生と承継を同時並行で進める必要があります。中小企業の再生支援の現場で何が起きているか? どのように対処しているのか?等々 事例も含め紹介しつつ、再生が必要な企業の承継支援について、お話しさせていただきます。
参加費 :2,000円(税込)
事業承継士または事業承継プランナー以外は4,000円(税込)
詳細 :https://www.jigyousyoukei.co.jp/2025/01/32065/
【2025年8月】

開催日 :2025年8月26日(火)18時30分~20時30分
講師 :北島 誠士 氏
テーマ :エンジェル税制を活用した株式譲渡益、及び、後継者に生前支払われる報酬対策における事業承継士が果たすべき役割
内容 :エンジェル税制はベンチャー企業を育成するため、ベンチャー企業に投資を行った個人投資家に対して、税制上の優遇を行う制度です。このエンジェル税制を上手く活用し、役員報酬や株式承継時の株式譲渡益にかかる所得税を大幅に減らせます。本セミナーをきっかけに、我々事業承継士が、クライアントから不要な資金の流出を防ぐことで、クライアントから、より高い信頼を勝ち取るための、大きな武器を得られるよう願っています。
参加費 :2,000円(税込)
事業承継士または事業承継プランナー以外は4,000円(税込)
詳細 :https://www.jigyousyoukei.co.jp/2025/03/32151/