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登記・遺言・改正相続法
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登記・遺言・改正相続法

2024年4月1日より相続登記が義務化されるとともに、先の相続法改正により早期に登記手続きを行うことが重要となっている。相続登記義務化とあわせて、最低限知っておくべきこれまでの相続法等の改正について簡単に解説する。

1. 相続登記の義務化について(2024年4月1日施行)
 全国に多数存在するいわゆる「所有者不明土地」解消対策の一つとして相続登記が義務化されることとなった。基本的な内容は次のとおりであり、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料の対象となる。
 (1)相続(遺言を含む。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が必要
   ※法務局に対し自分が相続人である旨を申し出る「相続人申告登記」を行うことにより申請義務を履行したものとみなされる 
 (2)遺産分割が成立した場合は、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記が必要

 今後は、遺言書がある場合や3年以内に遺産分割協議が成立する見込みがある場合は、これに基づく登記を速やかに行い、遺産分割協議が成立する見込みがない場合は、ひとまず「相続人申告登記」を行うべきである。

2.相続の効力について(2019年7月1日施行)
 法定相続分を超える部分について、登記等の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗できないこととなった。これにより相続人等は速やかに対抗要件を備える手続きを行うことが重要になる。

3.婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置(2019年7月1日施行)
 婚姻20年以上の夫婦間で自宅の贈与(又は遺贈)があった場合には、特別受益の持戻し免除の意思表示があったものと推定されることとなった。これにより配偶者は相続の際、より多くの財産を取得することが可能となった。

4.配偶者居住権(長期)(2020年4月1日施行)
 夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が、被相続人所有の建物に、亡くなるまで又は一定の期間、無償で居住することができる権利(=配偶者居住権)が創設された。これにより配偶者は建物の所有権を持たずに引き続き建物に居住できるとともに、預貯金など自宅以外の遺産をより多く取得することが可能となった。

5.長期間経過後の遺産分割の見直し(2023年4月1日施行)
 相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、具体的相続分(特別受益や寄与分の主張)ではなく、法定相続分(又は指定相続分)によることとされた。ただし、相続開始から10年経過後も、相続人全員が合意する場合は、特別受益や寄与分を反映した遺産分割は可能である。

6.預貯金の払戻し制度(2019年7月1日施行)
 各相続人は、相続預金のうち、口座ごとに一定の計算式で求められる額について、家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関から単独で払戻しを受けることができることとなった。

7.遺留分制度に関する改正(2019年7月1日施行)
 遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができる(金銭債権化)こととなった。これにより経営資源の利用権限を中断されることがなく、確定的に後継者へ資産を承継させることが可能となる一方、あらかじめ資金の手当てをしておくことが重要となる。

8.法務局の自筆証書遺言書保管制度(2020年7月10日施行)
 自筆で作成した遺言書を法務局に保管できる制度が導入された。本制度のメリットは、①遺言書の紛失・亡失の防止、②遺言書の破棄、隠匿、改ざん等の防止、③法務局の形式適合チェック(→方式不備による遺言書無効の防止)、④原本、画像データの長期・適正管理、⑤検認不要、⑥相続開始後に相続人等へ遺言書保管の旨が通知されることである。一方で、遺言書の有効性が保証されるものではないことには留意が必要。

9.遺言書の重要性
 特定の財産を特定の相続人に相続させる必要がある事業承継においては、遺言書の作成は特に重要であり、また、より早く不動産等の対抗要件を備えるためにも遺言書を作成することが望ましい。一方で遺言書は作成して終わりではなく、定期的に見直すことが重要である。

以上、相続登記の義務化とあわせて近時の相続法改正等を簡単に振り返った。

【執筆者紹介】
伊藤 恵子 氏(いとう けいこ)
伊藤けいこ司法書士事務所
(事業承継士・司法書士)
経歴・実績等
 愛知県庁退職後、司法書士資格を取得。司法書士法人勤務経て、2021年4月事業承継士登録、同年7月伊藤けいこ司法書士事務所開業。不動産登記、相続・遺言書作成支援、一般的な会社法人 登記にとどまらず、合併や会社分割などの組織再編手続きを得意とする。

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